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「小次郎つばめ返し」

一緒に悲しむ相手も居なかったのかと思うと胸が痛い

年末に入るちょっと前のこの時期、年賀状に先駆けて注文が始まるのが喪中ハガキだ。
今年一年、家族や親戚に不幸があった家では年賀状が出せないため、
代わりに喪中ハガキを出して、誰それが亡くなったというお知らせと、年賀はがきを遠慮する旨を伝えるのである。
一人暮らしのおばあさんから「喪中ハガキを頼みたい」という電話を頂き、原稿を取りに伺うと、
わずか3軒の集落に、おばあさんの家は道路から一番上の山の斜面にへばりつくように建っていて、
小石の転がる急な細い坂道を幾折りにも曲がりながら、ようやく家の玄関に辿り着くと、
昔ながらの大きな家から片足を少し引きづりながらおばあさんが出て来た。
87歳というおばあさんは、久しぶりに人と会話するのが嬉しかったのか、
心臓の手術をしないと駄々をこねて東京の子供に叱られた事や、足を痛めた事などを楽しげに話した後、
家の下の畑でわずかに作っている大根や白菜をひいて私にどっさり渡してくれた。
話を聞きながら、心臓の手術を心配をしたという子供さん達は、
何故この不便な家で大変な病気をした高齢の親を1人で置いておくのだろうと思いつつ、
預かった喪中ハガキの原稿を会社へ持ち帰って確かめると、
亡くなったご家族というのは「長男さん」、つまりおばあさんの息子さんだったのだ。