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「小次郎つばめ返し」

大体こんな風にほだされる

いつものように夕方からバタバタと急に忙しくなった。
『そんなときに限って電話がかかったりするんだよ、もう!集中出来ないじゃないか。』
『あっ!そうだそうだった!ばあちゃん(義母)から銀行でお金をおろしてくるように言われてたんだ!』
仕事中だが抜け出して銀行へ。
そのまま七日ごとの法要で実家へ急いだが仕事が気になって腰が半分浮いている。
お経もそこそこに職場へ戻って仕事再開。でももう5時前。
焦るなあ。焦ると余計思いつかない。
ジリジリジリジリ・・・・・
帰宅すると6時半はとうに過ぎ、当然ながら夕飯のおかずは何もない。
下ごしらえしながら、ばあちゃんのおしめを替え、腹を空かした娘に出来たおかずから差し出す。
全ての用意が終わって義父母に夕飯を持っていくと時間は夜8時。
犬小屋へ近づくとコロは待ちかねたように走り出し、我慢できなくなったのか歩道で用を足す。
20分ほど散歩して帰ると私と入れ違いに帰ってきた旦那が入浴中だった。
旦那が出た後ようやく湯船に沈み掛けたら、じいちゃんが「ピップエレキバンを貼ってくれ」という。
そんなの旦那に頼んだらいいじゃないか!
・・・とは言えず、「パパさんに貼って貰ってください」とやんわり言ったら私が出るのを待つという。
!!!!!!
急に腹が立ってきた私は湯船から出てバスタオルを巻いた格好のまま勢いよくリビングへいくと
「パパさん!じいちゃんにエレキバン貼ったげて、今すぐ!」
異様な格好で仁王立ちの私の足元には水がポタポタと落ちている。
風呂へ戻った私は「チクショー家出してやる家出してやる・・・・・」と独り言を繰り返した。


リビングに戻った私はきっと目がつり上がっていただろう。
しかしいっこうに気づく風もなくゆったりと晩酌をしている旦那を見るとムカムカして
旦那の背中に回っていきなり抱きついてやった。
旦那の袖無し防寒着が柔らかく頬にあたって一気に怒りが解けてくのが分かる。
人の気も知らないで
「どうしたんだよー」と脳天気な旦那は癒し効果抜群だ。