それは自分を見ているようだった
半年前ミニバスを突然始めた娘は人員不足のため、今日の試合でデビューした。
試合前のシュート練習はテッポウ魚の射的のように次々と繰り出されるが
見事なほど入らない。
試合中の彼女はパスを貰うべく手を挙げるが、それとは裏腹に
敵の背後に回わって、パスが自分の所へ来ない様にしている。
どうやら自信のない彼女はやる気を監督にアピールしつつ、
失敗しないよう安全な所へ逃げる作戦を取っているらしい。
こざかしく歯がゆい気持ちで、つい地団駄を踏んでしまう。
しかし試合が中盤にさしかかった頃、彼女になんと「フリースロー」が与えられた。
突然今までの人生にない注目をあびることとなった彼女は、
観衆にはいつもの「はにわ」のような、
でも私だけに分かる緊張で強張った表情でゴール前に立つ。
敵味方全ての視線を集めながら一投。
緩やかに弧を描きボールはきれいに網をくぐった。
練習で３０発打っても入らなかったシュートは本番に一発だけ入ったのだ。
結局７４−１４で負け、この１点は勝負になんの影響も与えなかったが、
少なからず彼女には何かを残しただろう。←希望
次回は少し積極的になった娘のプレーを見てみたい。
