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「小次郎つばめ返し」

頼む!落ちは決めて書いてくれ!

社内分業制の大きな印刷会社と違い、我が社では社員一人一人がすべての工程に関わるが、
その中の重要な仕事の一つに「校正」がある。
今回持ち込まれたのは、地元の小説創作グループの近頃珍しい手書きの原稿であった。
原稿と打ち出された文字に間違いがないか読み比べていくと、つい、フフッと口元から漏れてしまう。
つたない文章であることは、自分が書けなくても分かってしまうのである。


中年女性は結婚相手を仲介する仲人業。
自分の仲介によって若い男女が結婚することになったらしいが、
その女性はいつのまにかフェードアウト。
時には若妻、時には若旦那の立場で綴られた新婚生活。
ダレ目線なのか分からないため、ダレにも感情移入できず、あくびを押し殺しての読み進め。
鬼平のナレーションのように淡々としかし、内容的には泥沼化。
自分の店と家を持ちたいと節約する旦那に、「これっぽっちじゃ生活できません」と不満を持つ若妻。
周りの女性は皆イキイキと働いて充実しているとこぼす若妻に
「自分が働けよ!」と、赤ペンを握りしめ、つい大きな声を出してしまった。
とうとうある日、旦那に黙って実家に帰り、連絡もなしに何ヶ月も家を空けてしまう。
母親を伴って迎えにきた旦那を追い払い、
それでも諦められず、三顧の礼を尽くす旦那に罵詈雑言(放送禁止用語連発)の嫁の父。
腹の虫が治まらず原稿用紙を勢いよくめくると、
素人小説家にありがちな、尻切れトンボ、良く言えば余韻の残りすぎた終わり方であった。


その日一日、仲間内で「であの夫婦離婚したの?」と持ちきりであった。