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「小次郎つばめ返し」

[感想]パッチギ!

私が物心ついたころ、グループサウンズは跡形もなく、
学園闘争の激しかった時代は映像で見るのみで
昔義父と一緒に鉱山で働いていたという在日コリアンの方も近所にいない。
ひょっとしてかなり意図的にそれらを避けた教育を受けていた時代だったかもしれないが
通夜の席で康介が言われたことを私も何も知らなかった。
だからといってまるっきり知らない時代だと思えないのは、
そこにあるトタン屋根や、土間のある台所、ガラスのはまった立て付けの悪い引き戸、
集められた鉄くずの山などの風景、世間の風潮、大人の空気、真っ赤に塗られた叔父の部屋の裸電球、
そういった時代の残り香に触れ、叔父や叔母の体験を私もしたと勘違いしているからだろう。
懐かしいはずはないのに胸がキリキリする。
このデリケートな問題になると必ず極端な持論を展開する人が私の身近にもいるのだが、
最後にはいつも言い争いになり決着を見ずにうやむやになってしまう。
相手は過去、現在のいろんな事例を知っていて、私はまるで知らない。
けれどどんなに説得されようとその国の一面だけを見て、
それが全てのように一括りにしてしまうのは私にはできないのだ。
私はいっそのことすべての境界線がなくなってしまえばいいのにと
まるでジョン・レノンような夢物語を秘かに願ってはいるが自分からは動き出せないでいる。


・・・・・・・・などと以前映画を見た直後に打っていました。なんつー遠回しな。
午後の空いた時間を利用してまったりとDVDを観たあとの感想は「こりゃ青春映画じゃん!」という
まったく当たり前のことでございました。(←だからそう宣伝してるじゃん!)
きっと観る前から「これは朝鮮と日本のデリケートな問題を含んだ映画なのだ」
ということが私の頭にあったからなんでしょうねえ。
いろいろな事情を含んだ背景ではありますが、
「友情」「恋愛」「未来」といった青春の代名詞のような要素がすべて詰め込まれ、
あふれ出るようなエネルギーと熱気がムンムンとしとります。
まさに康介(塩谷瞬)がこぶしを振り上げたあのショットがこの映画を全てを表しているようです。
『世界は君らのものだ』と託された登場人物と同年代の方々は、
今はきっと次の世代に伝える立場になっているはず。
だけどあの頃と同じく、今にも吹き出しそうな情熱をもって現在を生きてるんだろうなあと
監督やあの年代の人達をみて思うのであります。
ギックリだの更年期だの言ってる場合じゃありません。
私らの世代も元気ださなアカンね。
映画館で初めて観たとき、事前に噂で聞いていたにもかかわらず、
ヒッピー姿の坂崎(オダギリジョー)が画面に再登場したときはその唐突さとびっくりビジュアルに
娘と顔を合わせて大笑いしてしまいました。
どうなんだ!この人は!脇でイキイキしすぎ!!


昨年韓国へ親善、交流を目的とした研修に行ってきた娘は
イムジン河を見てきたよ」となんでもないように言っておりました。
すでに彼女たちの世代には何のわだかまりも何の境界もないようです。(少なくとも表面上は)
その娘にどう伝えるべきか、ひょっとしたらもう伝えない方がいいんじゃないのかなどと
正直私は今でも答えを出しかねています。