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「小次郎つばめ返し」

ひさびさ介護日記

普段出掛けることのない義母にとってデイサービスは、
風呂や食事の他に、散歩や近くの商店の出張販売で買い物ができるとても楽しみな時間のようだ。
特に買い物が大好きな義母は、総菜をのべつまくなし買ってくるので
我が家では『恐怖のフライデイ』と恐れられていて、大抵次の日こっそり主任へ渡るのである。
こんな風に義母は週2回のデイサービスを心待ちにしているのだが、なにせドタキャンが多い。


この日も全ての準備を終え、会社へ行こうかと言う時になって
「今日は足が痛いから行かない。昼の弁当を作っておいてくれ。」と言い出した。
えーーーーーー!もうーーーー早く言ってくれよー!!
デイサービスに行かない義父の分は作り終えてるんだから二度手間じゃーん!
しかも出勤直前だから時間がないんだよ!
「分かりました!今から作ると間に合わないので、
 遅刻すると会社には電話を掛けておきます!!」
腹立たしさに、つい皮肉を言ってしまった。


しかしその日、会社から帰宅すると台所には義母の弁当が手つかずに置いてある。
『弁当も食べられないほど具合が悪かったのか。文句言って悪かったな。』
朝の一方的な腹立ちを少し申し訳なく思いつつ、義母の部屋へ顔を出すと
なんとテーブルの上には総菜が山積みになっていた。
私に気付いた義母が振り向いて、
「足が治ったから、デイサービスに行けたのよ。」
と満面の笑みで言ったのである。
さっきの殊勝な気持ちは一気に吹っ飛び、私はドタドタと台所へ向かうと
遅刻して作った義母の弁当をそのまま残飯入れにドサリと捨ててしまった。
それでも気持ちの収まらない私は今朝の出来事を知る主任に
『デイサービスに行けたんだって!!!』とメールすると、
しばらくして主任から
『やったー!明日はフライデイだー!』
と脳天気にメールが返ってきたのであった。