oozy Blog

「小次郎つばめ返し」

器がでかすぎるのか、底が抜けてるのか

夕飯の準備に追われながら、玄関の戸を開けてみるとそこにはなんとなく見覚えのある女性が立っていて
「こんにちは」も「すみません」なく、いきなり
「五千円ぐらいどうにかならない?」と小声で言ったのだ。
「どうにか」というのは貸してくれという意味だろう。
私よりおそらく5才くらい上のその女性とは挨拶を1,2度交わしたくらいの、ほぼ交わりの無い人なのだ。
もちろんそれくらいの持ち合わせを持ってはいるが、
とっさに『後で家族が面倒なことに関わるようになってはいけない』と思い、
「旦那がまだ帰ってないから持ち合わせがないのよ。ごめんね。」と言ってしまった。
女性は無造作に後ろにまとめた白髪交じりの頭をちょっと下げて引き返していった。
以前彼女のご主人が演歌歌手でデビューしたと聞いたことがあるが、
その後の成功したという話は伝わってこない。
ほとんど面識のない私のところまで夕方にお金を借りに来るくらい困ってるんだろうかとか、
食べるものが無いんじゃないだろうかとか、
このあと一軒一軒お金を借りるために他の家を訪ねて歩いたんだろうかとかグルグル思い、
つまりは貸さなかったことを少し後悔しつつ、この話を旦那にすると
興味深そうに聞いた後「ふーん、そうか。」とだけ言い、
「貸さなくてよかった」とも「貸したらよかったのに」とも言わないで、
にここと私の話の続きを待っているのだった。
私が貸しても貸さなくても、多分この人は納得するんだろうな。