oozy Blog

「小次郎つばめ返し」

年を取るごとに昔の記憶は濃くなるらしいです

届いた白封筒の手紙は、ばあちゃんあて。
表書きの文字を見て感じた通り、便せんの文字も神々しいまでに美しい。
差出人のご夫婦は共に義母と同郷で、お二人がよく知る義母の話になり、懐かしくなって筆をとったとの事。
読み進めて更に驚いたのは、手紙を書かれたご主人が91歳、奥様が88歳、
軽度の認知症がある奥様の代わりに、ご主人が家事一切と身の回りの世話をしているという事でありました。
自分が生きることも大変なその高齢で、未だに気を張って生活しなければならないのか。
寒々としつつ、なんとも寂しい気分になるのでありました。


手紙が届いて数日後、手紙の差出人の奥様から電話があったのであります。
『タカコさんは入院されていると伺って。わたくし、タカコさんとは同じ局に働いておりましたのよ』
とても認知症とは思えないほど品の良い言葉遣いと整然と話す電話の主。
しかし十秒毎に「同じ局で働いておりましたのよ」を繰り返されるのでありました。
よくよく思えば、高齢になってもご夫婦だけで生活できる事は幸せかもしれないと思いつつ、
十秒前の事を忘れる方に、いつまでも思い出して貰える義母もまた幸せかもしれないなと思うのでありました。