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「小次郎つばめ返し」

ご本の紹介

中村美重子様(岩国市「草笛短歌会」)の『歌集つづれさせ』をカバーデザインさせていただきました。
「つづれさせ」とはコオロギで、そもそもは「衣をつづり刺せ」の意味で、
コオロギが鳴く頃に衣を作って冬の準備を始めるという事だそうです。

○カバー
表紙のバラの刺しゅうはご本人様の作品です。
お持ち頂いた刺しゅうは額いっぱいでトリミングする余白が無かったので、
逆にバラを拡大してカバーいっぱいに配し、バラの中にタイトルを入れ込んでみました。
白い紙にバラの鮮やかさが映えるよう、刺しゅうの素地は少し残して消しました。

○遊び紙
当初のお見積もりでは色上質でしたが、2種類の特殊紙見本をご覧頂いたところ、
布のような手触りの「新だん紙」を気に入って採用していただきました。
色は深いエンジ色です。
○扉
遊び紙と同じ「新だん紙」の白色(優しいオフホワイトに見えます)。
タイトル名にもなった歌は直筆原稿でお持ち頂いたので、
用紙のチェック印や汚れを消去して配してみました。
ご本人様の直筆が入ることによって、より温かみと親しみのある本になったと思います。
片方の扉は、鮮やかな日本伝統色。
表面がクレープになっている紙の特性上、ベタに近い赤い帯はムラのない様に刷るのに苦心したようです。


一刺し一刺しして作られたカバーの鮮やかな大輪のバラは、ご本人様のイメージと重なるのでありました。
作成には終始、華やかで繊細、力強い存在感を意識いたしました。