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「小次郎つばめ返し」

*[オダギリジョー]塀の中の中学校(平成22年10月11日)

Cast:オダギリ ジョー 大滝秀治 すまけい 千原せいじ 染谷将太 渡辺 謙 他


美しい景色に物静かなナレーション、大げさなBGMも演出もなく淡々と進む物語。
大声で怒鳴らなくても怒りが伝わり、泣き喚かなくても苦悩が滲み、
プライズに頼らず役者さんたちの力量だけで魅せた、純文学のような上品で正統なドラマだと思いました。
役者さんたちと制作スタッフがこのドラマの完成のために一生懸命取り組み、
欠損のない見事な石膏像が出来ました。
しかし誰が見ても美しいこの石膏像に、残念ながら私は心を大きく揺さぶられる事が無かったのであります。
それは懐かしい気さえするドラマの世界に、現在を感じにくかったのかもしれないし、
私のささくれが引っかかる突起が、石膏像の滑らかで柔らかい表面に無かったからかもしれません。


シーン毎では役者さんたちの熱演に釘付けになり、眼を潤ませながらも、
この評判の良いドラマが、何故私の心に響きにくかったんだろうとつれづれ考えるに、
私が知性的でない、加えて心の老化という事以外の理由を思いつくとしたら、
石川順平がこの仕事に正面から向きあっていこうとするきっかけの
「現実を振り払うためにとにかく仕事に打ち込みたかった」→「生徒たちの心に寄り添おう」とするまでの心の変化や
深い闇を抱いた生徒たちが、闇を覗いた事も絶望したこともなさそうな若造石川順平を
自分と近い存在として慕い、受け入れていったキッカケや変化が、
私には見えにくかったせいかもしれません。
まさにオダギリ氏が番宣で言っていた「生徒の一年を追うドラマ」でありました。


元が実話であることから様々な配慮があったり、
またいろいろな考えのもと、第三者的な見方は必要だと思いますが、
このキャストで心をひっかくようなドラマが見てみたかったというのは、ワタクシのワガママでございます。
それが良いのか悪いのかわかりませんが。


というドラマの感想はさておき(本来ドラマの感想が本筋ですけど)、
ここからの感想は一役者ファンとして、公平公正に見られないワタクシをお許し下さい。
石川順平というインテリでナイーブでひ弱で傲慢、
エリートでいる自分を恥じつつも、どこかでそれを誇らしいと思っている大人移行中の青年を
オダギリ氏は大人フェロモンを隠しつつ見事に体現していたと思います。ええルックスを含め。
この独特なオダギリ氏の透明な存在感を眼にすると、順平が西郷どんに(違)言われた、
「“華”は教えられないもの」という言葉を思い浮かべ、
確かに“華”は教わるものではなく備わっているものだなと、しみじみ思うのであります。
(・・・・・ドラマファンに怒られそうな〆だな・・・・・すんません・・・)