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「小次郎つばめ返し」

その気の強さに感嘆するばかり

ベッドから下ろして畳の上に寝せてくれと大声で叫び続けるバアちゃん。
「ベッドが焼け付くように熱くなる。足が痛くなる。」
介護ベッドだからモーターが熱いのかもとマットを触ってみるが、熱はもってない。
「大丈夫冷たいよ。このベッドは暖かくならないんだよ。」とバアちゃんに説明しても意味はない。
なぜならば、バアちゃんはこの狭いシングルベッドが嫌いだからだ。
熱い、熱くないは関係ないのだ。
床へ寝せると、おしめ替えや食事、車いすへの移動など、とても一人では出来なくなる。
私と旦那を見ながら、四の五の言わずに下ろしてくれと繰り返すばかり。
「もう何を言ってもアンタらの言う事は一切きかん!」と癇癪を起こした時、
堪忍袋の緒が切れた旦那が、電気のスイッチも切って、部屋から出て行ってしまった。


暗い部屋で「こんな仕打ちをするかー!私がベッドで死んでもいいのかー!」
人聞きの悪い事を叫び続けるバアちゃん。
ほとんど寝たきりなのにどこから出るのか、その声量。
「一人にさせて落ち着かそう」と旦那は言うけど、
ばあちゃん激情は、あ、いや劇場は、客もいないのに最高潮である。
十数分後、ちょっと可哀想になった私は「言う事を聞けば気が済むよ」と旦那に頼んで、
二人がかりで抱えて畳の上に降ろし、綿布団に寝せたのである。
枕を頭の下にあて、「どう?体痛くない?」と顔をのぞき込んでやさしく声をかけると、
「これで死んでも本望じゃ!」
と、舞台の歌舞伎役者のように見得を切ったのであった。