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「小次郎つばめ返し」

オールキャストによる不思議な芝居

2年ぶりに会った93歳の祖母は別人のように面変わりしていた。
誇り高い自由人だった祖母は、大柄だった体躯を不自由そうにソファーにうずくまらせ、
鋭くブラックな言葉が飛び出していた口からは不明瞭な音が漏れるだけ。
孫たちから尊敬の念を集めていた往年の姿はどこにも無かったが、
私は驚きを祖母に気取られまいと、殊更大きな声ではしゃいだ。
母も叔父も叔母も、祖母もはしゃいだ。
不自然なほどに明るく大きな声で喋って笑った。
振り向くとおどけた調子で祖母は大きく手を振った。
ソファーに座ったまま、にこやかにいつまでも手を振っていたので、
私たちも腹を抱えて笑いながら手を振りかえしたが、
祖母の姿が見えなくなって、狭いエレベーターに入ると4人は無言になった。