oozy Blog

「小次郎つばめ返し」

[オダギリジョー]「BIG RIVER」2006.5.27

アリが「アメリカが私の妻を奪い取った」というには、ちと説得力が弱く、
テッペイが「色々やりたいことがあるんだ」というには、あまりにも勝手な言い訳で、
サラが誰かに連れ出して貰わなければそこから抜け出せないという理由もよく分からないんですが、
『国籍の違う3人が壁を乗り越え、いつしか互いの立場を認めあうストーリー』じゃなく、
『見知らぬ男女3人が1台の車で旅をしながら、手探りで心を通い合わせるラブワゴン』という感じで
私はとても楽しめました。
舩橋監督のインタビューをきちんと読んでないので(と、いうか覚えてない・・・)、
本当に伝えたいことは分からないけど、ラブワゴンでいいじゃないかという気はします。
初対面のしかもお互い外国人同士がよそよそしくも、なんとかコンタクトを取ろうとする所が、
町中で外国人に道を尋ねられて教えられたときの達成感と満足感、
また、団体の海外旅行から帰ってきたときに「外国の人に会話が通じたー!」と
まるで国際親善で大役でも果たしてきたような、ほんわかする時ととてもよく似ている・・・
といった感じでしょうか。(くどい)


こうして書き並べてみるとけなしているように思えるんですが、
本当にびっくりするほど心地良くて楽しかったんですよ。
岩や砂漠を舞いながら吹き抜ける風のような口笛とか、
赤い色が沈殿する山肌にとてもよく合うチェロの音とか、
ものすごく好きです。
オダギリ氏が舞台挨拶で言ったように鑑賞中は映画の意味を何も考えず、
私は3人の国籍や人種すら頭から無くなって、
ただ人間の感情がモニュメントバレーの岩山の間に漂うのを見ていました。
今後この経験が人生の転機となって、アリが自国で自分を顧みるとか、
サラが勇気を出して一歩踏み出すとか、
テッペイが自分以外に大切に思える何かを得るとか、
そういう風に3人が劇的に変化成長することもなさそうな所がむしろリアルで、
何も起こらず、時間がただゆっくり過ぎるこの映画を見て、
私はとても癒されたのでありました。
(監督の意図するものとは違うかもしれませんが)